どうも、いしだです。
今回はブロック崩しを題材に考えます。
ブロック崩しは、跳ね返すだけの古くて単調なゲーム。これを今回はAI開発で退屈にならないように、再開発してみました。何を足せば、あの古典が気持ちよくなるのか。今回は、私が実際に設計した6つの要素を、その理由ごと紹介します。
今回はClaude CodeのFable 5をベースに、Codexを使って調整しました。
デザインセンスの点ではFable 5のおかげでワンランク上がったように思いますが、やっぱりまだまだAIチックなのは抜けきれていません。
開発期間は2日程度です。
この記事のポイント
- 気持ちよさの土台は効果音とエフェクト、その体感を倍増させたのはマルチボールだった
- 貫通と「爆破エフェクト」で、ブロックが一掃される全能感を設計した
- 独自の工夫として1ステージを2wave制にし、「強くてニューゲーム」みたいな状態を作って気持ちいい瞬間をもう一度味わえるようにした
そもそも「爽快感」とは何かを、先に分解した
さて、爽快感を足すと決めたとき、私が最初にやったのは、その爽快感とは何かを考えることでした。
参考にしたのが、プレイヤーが爽快感をどう感じるかを調べた研究です。東京工芸大学の研究では、爽快感を生む要素として、自分の操作で一掃する「全能感」、緊張からの解放や非日常を感じる「解放感」、成功を視覚的・聴覚的な演出で称える「達成の称賛」の3つが示されています(中井理貴・篠山拓朗・遠藤雅伸「プレイヤーが爽快感を感じる要素に関する定性調査分析」東京工芸大学)。
一方で、古典的なブロック崩しでは何が退屈かも分析しました。
それは、多くのブロックを1個ずつ崩す作業感ではないかと考えました。
そこで、退屈さをなくして爽快感を出すために、今回私が足した6つの要素を一つの表にまとめておきます。
それぞれが、先ほどの3つのうちどの爽快感に当たるかも書いておきます。
| 足した6つの要素 | 何が起きるか | 爽快感 |
|---|---|---|
| ①画面上部で跳ね返り連鎖しやすい配置 | 上部でボールが暴れ、複数のブロックを巻き込んで壊す | 全能感 |
| ②貫通アイテム | ブロックを突き抜けて、一直線にまとめて壊す | 全能感 |
| ③爆破演出 | 壊したブロックの周囲ごと吹き飛ばす | 全能感 |
| ④効果音とエフェクト | 1回の破壊に手応えを与える | 達成の称賛 |
| ⑤マルチボール | 多数のボールがブロックを破壊する | 解放感(+達成の称賛を増幅) |
| ⑥2wave制 | 強い状態のまま初期配置へ戻し、もう一度味わわせる | 解放感 |
こうして並べると、定義された爽快感をキレイに狙えていると思います。
この記事では、まず土台となる効果音とエフェクトの話から始め、その後で、私が独自に足した2wave制の話へ進みます。
一番効いたのは「効果音」と「エフェクト」がベース、そしてマルチボールが増幅させた
6つの要素を足してみて、気持ちよさの土台を作ったのは効果音とエフェクトでした。そして、その土台を一気に増幅させたのがマルチボールでした。
どちらが効いたかと問われると、私は「土台は効果音とエフェクト、体感を跳ね上げたのはマルチボール」という掛け算で捉えるのが正確だと考えています。
爽快感のベースは「効果音」と「エフェクト」
効果音とエフェクトは1回の破壊の質を上げます。
この2つは想像以上に「爽快感」との相関があります。
自分で効果音素材を選定し、エフェクトはAIと何度もやり取りして「画面の揺れ」や「爆発パーティクル」を追加して欲しいと調整を行いました。
ここはこだわりどころだと思います。
マルチボールの「カオス状態」が爽快感を押し上げた
マルチボールはその破壊の数と同時性を増やします。
そして画面が一気に華やかになります。
パチンコのフィーバー演出にも近いかも知れません。
ボールが1つのときは、破壊も音も1つずつです。これがボール数個に増えると、画面のあちこちで同時にブロックが弾け、音とエフェクトが一気に重なります。
この「ワチャワチャ感」「カオス状態」が、あっという間にブロックが消えていく爽快感につながりました。
ベタな手法だと思いますが、遊んだ後に一番印象へ残ったのがこのカオスな状態でした。
2Dゲーム古典の「パーティクル」の考え方を借りた
エフェクトの作り方では、2Dゲームで昔から使われてきたパーティクルの考え方を借りています。
破壊した瞬間に、細かい粒が四方へ飛び散る。あの表現です。
特に新しい技術ではありませんが、ブロックが「割れて散った」という手触りを出すのに向いています。アニメ的、あるいはゲーム的な誇張が、破壊の気持ちよさを補強してくれます。

マルチボールと爆発パーティクルのエフェクト

爆破連鎖でさらに「カオス状態」に
貫通・爆破で「一気に壊す」全能感を作った
効果音とエフェクトが達成の称賛の土台だとすれば、次に足したのは「全能感」、つまり自分が圧倒的に強いと感じられる要素です。1回の当たりで、複数のブロックをまとめて壊せる状況を作りました。
画面上部で跳ね返り、複数を巻き込む
ボールが画面上部の密集したブロックの間に入り込むと、そこで何度も跳ね返り、周囲のブロックを次々に巻き込んで壊します。
これも古典的ながら「ブロック崩し」において気持ちが良い瞬間。
プレイヤーが狙って上部へ通したボールが、あとは勝手に暴れて大量のブロックを消していく。この「自分の一手が、想像以上の結果になる」状態が、全能感につながります。
ステージの最初の方ではこの気持ちいい状態も提供しました。
貫通アイテムで、まとめて消す
貫通アイテムを取ると、ボールがブロックに当たっても止まらず、そのまま突き抜けて奥のブロックまで壊します。
通常は1個で跳ね返るところを、一直線にまとめて消せます。跳ね返りの上部連鎖が「偶然の大量破壊」だとすれば、貫通は「狙って通す大量破壊」です。方向性の違う気持ちよさを、両方用意しました。
「爆破」で、周囲を巻き込む
さらに独自の演出として、特定のブロックを壊すと周囲ごと吹き飛ぶ「爆破」を足しました。
貫通が直線的な破壊なら、爆破は面での破壊です。1点を壊した結果が周囲へ広がるため、連鎖的に大きく消える瞬間が生まれます。全能感を一段引き上げるための、今回の味付けです。

巨大爆破連鎖ステージも用意
1ステージを2wave制にした:「強くてニューゲーム」の気持ちよさ
ここからが、今回の独自の工夫です。1つのステージを、2つのwaveに分ける構成にしました。
きっかけは、私自身が感じていた物足りなさでした。ブロック崩しでアイテムを取り、ボールが増えたり貫通が付いたりして、いよいよ強くなった。その一番いい状態になった頃に、ちょうどブロックを崩し切ってステージが終わってしまう。強くなった状態を味わう時間が、あまりに短いのです。
そこで、wave1でブロックを崩し切った後、強化された状態のまま、ブロック配置だけを最初へ戻したwave2を始める構成にしました。
これは、遊んだことのある方には「強くてニューゲーム」と言えば伝わると思います。
一度クリアした後、強い状態のまま最初からやり直すと、序盤の敵が面白いように片付く、あの感覚です。強くなった自分で、もう一度まっさらな盤面へ挑む。
wave2では、ブロックがwave1よりもさらにあっという間に崩れていきます。
一番気持ちいい瞬間を、一度きりで終わらせずにもう一度作る。
これが2wave制の狙いです。
| 項目 | 1waveで終わる構成 | 2wave制 |
|---|---|---|
| 強化を味わう時間 | 強くなった直後に終わる | 強い状態でもう1面遊べる |
| プレイ後の感覚 | 物足りなさが残ることがある | やり切った感が残る |

アイテムを取った強い状態で「WAVE2」が始まって瞬殺できる
ステージ設計で「最後までやりたい」を作った
また、爽快感そのものとは別に、「最後まで遊びたい」と思える長さの設計にも手を入れました。
それは「終わりのあるステージ制」にするということです。
ステージごとにアイテムと破壊ポイントを変えて「期待感」を足した
全てのステージを同じ作りにはせず、ステージごとに登場するアイテムや、崩し方の要点を少しずつ変えています。
次のステージでは何が来るのか、という小さな期待が、次を触る理由になります。これは、以前 #13「ゲームの面白さを作る12の要素」でまとめた要素の一つ、「期待感:次は何が起きるか見たい」に当たります。
爽快感を毎回まっさらな気持ちで味わってもらうための工夫です。
全10ステージという「ちょうどいい長さ」に区切った
今回は全10ステージにしました。「これぐらいなら最後までやりたい」と思える長さを狙った結果です。
短すぎると爽快感を十分に味わう前に終わり、長すぎると飽きが来ます。今回のボリュームでは、10ステージがその間のちょうどいい区切りだと私は判断しました。
あえて有限にした理由:爽快感のアイデアは、いずれ枯渇する
ステージ数を無限に増やさず、あえて有限で終わらせているのには理由があります。
ユーザーも長すぎると飽きを感じて離脱するからです。
また、新しいアイテム、新しい破壊のパターン、新しい見せ場。こうした爽快感の種は無限には出てきません。手札が尽きた後も惰性でステージを増やすと、同じ演出の使い回しになり、マンネリ化します。
それなら、アイデアが枯れる前に気持ちよく終わらせるほうが、遊んだ後の印象は良くなると考えました。
仮にこれをモバイルゲームとして作るとしても、私であれば50ステージから100ステージあたりで終わる設計にすると思います。
爽快感を保てる範囲で気持ちよく終わってもらう、という判断です。
爽快感のあるブロック崩し制作に関するQ&A
まとめ:古典に「気持ちよさ」を足すという考え方
古典的なブロック崩しが単調に感じられる原因を、私は「1個ずつ崩す作業感」だと捉えました。だとすれば、単調でなくすには、1回の破壊で起きる変化を大きくするか、破壊を複数回できることだと考えました。
まずは、その土台になったのが、効果音とエフェクトでした。そして、それを一気に跳ね上げたのがマルチボールです。
あちこちで同時にブロックが弾けるカオスな状態が、あっという間に崩れていく爽快感を作りました。そこへ、上部での跳ね返り連鎖、貫通、爆破を重ね、一気に壊す全能感を足しています。
そして、今回の独自の工夫が2wave制です。強くなった一番いい状態で終わらせず、その状態のまま初期配置へ戻すことで、「強くてニューゲーム」の気持ちよさをもう一度作りました。さらに、全10ステージという長さと、ステージごとの変化で「この長さであれば最後までやりたい」という気持ちも設計しています。
爽快感のアイデアはいずれ枯渇し、時間とともにユーザーに飽きが出てしまいます。
だからこそ、枯れる前に気持ちよく終わらせる。この畳み方も含めて、古典に爽快感を足す一つの改善例として、参考にしていただけたら幸いです。
それではまたー





