#17 AIで作った雑な脱出ゲームを改善:「探索」と「説明なしで伝わる演出」を足した

どうも、いしだです。
今回は#16でも触れた開発初心者向けにオススメの脱出ゲームのお話。

AIを使えば、普通の脱出ゲームくらいは簡単に作れると思っていました。
実際にClaudeやCodexへ作らせてみると、雑な指示でも「それっぽい脱出ゲーム」は出来上がります。

しかし、世の中の脱出ゲームでは当たり前に行われている細かなシナリオ調整や演出が抜け落ちていました。

例えば、鍵を使った瞬間に、扉が開く様子を見せず次の画面へ移動したり、アイテムの中身を画面に表示せず、「アイテムを手に入れた」という文章だけを出す。

こういった挙動は、ゲームとしては成立していますが、プレイヤーから見ると何が起きたのか分からず不親切です。

さらに、ヒントとギミックを近くに置き、同じ部屋の中だけで順番に問題を解かせるため、探索する楽しさもほとんどありませんでした。

というわけで今回は、そういった不親切であったり、ヒントの順番を調整することで改善し、なんとか「一般的な脱出ゲーム」を制作することに成功しました。
制作期間は全部で5日間ほどかかりました。
背景絵やアイテムの画像はすべてCodexからimagegen(GPT Image 2)経由で生成しております。

この記事では、AIが作った脱出ゲームへどのような改善を加えたのか、実際の制作例をもとに書いていきます。

実際に作ったゲームはこちら
脱出ゲーム「忘れられた書斎」

 

今回の制作で分かった3つのこと

  • 脱出ゲームの面白さは「探索」と「謎解き」の両方にある
  • AIで雑に指示して作らせると、一本道の謎解きクイズ集になってしまう
  • 状態変化を丁寧に設計すると、文章で説明しなくても状況が伝わる

 

脱出ゲームの面白さは「謎解き」だけでは足りない

脱出ゲームと聞くと、暗号や数字の規則を見抜く「謎解き」を最初に思い浮かべる人が多いと思います。

もちろん、謎解きは脱出ゲームの中心にある遊びです。手がかりを組み合わせ、正解を思いついた瞬間には、パズルを解いたときのスッキリ感があります。

ただ、実際に脱出ゲームを一つ作ってみると、謎の内容だけでは面白さが決まらないことが分かりました。

というのも、脱出ゲームには、謎を解く前に手がかりやアイテムを見つける「探索」があります。

部屋の中にある棚や箱を調べ、意味のありそうな模様を見つけ、以前は開かなかった場所へ戻る。この過程があるからこそ、自分で謎を発見した面白さが感じられます。

脱出ゲームの面白さは「探索」と「謎解き」の二つにある

私なりには、脱出ゲームの大きな面白さは「探索」と「謎解き」の二つにあると考えています。

探索して情報を集め、その情報を使って謎を解く。
この二つがつながることで、部屋全体が一つのゲームになります。

ところが、AIに「雑に」作らせた最初の構成では、箱のすぐ近くに暗証番号のヒントがあり、その箱から手に入れた鍵を同じ部屋の扉に使う形になっていました。

そういった仕組みは、脱出ゲームというよりも「一本道の謎解きクイズ集」に近く感じられました。
それだと探索の面白さが足りないです。

項目 一本道の謎解きクイズ集 探索のある脱出ゲーム
ヒントの場所 ギミックの近くにある 別の場所や別の部屋にある
アイテムの用途 その場ですぐ分かる 後から使い道が分かる
プレイヤーの行動 表示順に問題を解く 部屋を調べ、以前の場所へ戻る
プレイヤーの感覚 問題を出されている 自分で手がかりを見つけている

探索する場所が少ないと、面白さも薄くなる

同じ部屋に必要なアイテムが分かりやすく並び、ヒントもギミックのすぐそばに書かれていると、考える範囲は狭くなります。
これは手間が省ける一方で、探索する楽しみが少ないとも言えます。

今回の改善で目指したのは、一本道の謎解きクイズ集ではなく、「部屋全体を使った宝探しの楽しみ」でした。

 

AIが雑に作った脱出ゲームの問題点2つ

問題点1:最短距離で進める構成だった

今回「雑に」ClaudeやCodexへ作らせた範囲では、ゲームの進行に必要な要素を非常に素直に配置する傾向がありました。

ヒントの近くに答えを入力する装置を置き、アイテムを手に入れた部屋がそのまま近くのギミックに使える仕組みでした。

これは、プレイヤー側から見ると、脱出ゲーム特有の手探り感が消えてしまいます。

脱出ゲームの探索では、「この模様をどこかで見た気がする」「先ほど開かなかった箱に使えるかもしれない」と考える時間も遊びの一部です。

最短距離だけをつなぐと、その時間が失われてしまいます。

ヒントとギミックが近くにあり、同じ部屋で完結している

ヒントとギミックが近くにあり、同じ部屋で完結している

 

問題点2:分かりにくい部分を文章で説明しようとした

もう一つ困ったのは、操作後の変化を画像で見せず、文章で説明しようとしたことです。

例えば、箱を開けた画像や、中にアイテムが入っている状態を見せず、「アイテムを手に入れた!」という文章だけを表示します。

よくある脱出ゲームでは、ゴミ箱をタップすると、ゴミ箱の上にアイテムが表示されます。そしてさらにそのアイテムをタップすることで、アイテムを取得します。

そういったアイテム出現の演出を省略し、その不足を日本語で説明していたのです。
文章を増やす前に、画面を見れば状況が分かる構成へ直す必要がありました。

世界へ公開する場合には、状況説明のための文章まで翻訳する必要が生まれますし、そもそも脱出ゲームでは極力文章が無くてもユーザーに伝わるような演出にすべきです。

アイテム出現演出が無く、文字だけで表現している

アイテム出現演出が無く、文字だけで表現している

 

改善1:部屋をまたいで手がかりとアイテムを配置した

というわけで、問題点2つが分かったので、改善を行いました。

探索を増やすために行ったのは、単純に調べられる場所を増やすことではありません。
手がかりがある場所と、手がかりを使う場所を離しました。

一つ目の部屋にあるギミックのヒントを、二つ目の部屋へ置く。
二つ目の部屋で必要になるアイテムを、一つ目の部屋へ置く。

などなど、複数の部屋を関係させることで、プレイヤーは一度通り過ぎた場所へ戻るようになります。

その場で問題を完結させない

改善後は、その場で答えが分からないものを残しました。

脱出ゲームでは、同じ部屋を何度か往復することがあります。
ただし、何も変化がないのに何度も歩かせれば、移動が負担になります。

今回の改善では、別の部屋で得た情報やアイテムによって、最初の部屋でできることが増えるようにしました。

最初は開かなかった箱が、新しく手に入れたアイテムによって開く。意味が分からなかった装置が、別の部屋で見つけたヒントによって解ける。
これが探索型脱出ゲームの基本だと思います。

比較項目 改善前 改善後
ヒントとギミック 同じ部屋で完結する 複数の部屋に分けて配置する
アイテムの使い道 入手後すぐに使う 以前見た場所で使う
部屋の移動 次の部屋へ進み続ける 新しい情報を持って以前の部屋へ戻る
プレイヤーの記憶 過去の情報を使う機会が少ない 以前見たものを思い出して関連づける

 

改善2:箱が開き、アイテムを取れたことを画像だけで伝えた

もう一つの改善策は、箱が開いてアイテムを取れたことを、文章を使わず画像だけで示した部分です。

改善前は、箱をタップすると突然アイテムが所持品へ入り、「アイテムを手に入れた!」などと表示されていました。

プレイヤーから見ると、どこからアイテムが出てきたのか分かりません。

そこで、箱の状態を段階ごとに分けました。

箱の状態を一つずつ見せる

① 最初は閉じた箱が表示
② ギミックを解くと箱が開き、中にアイテムが見える状態
③ プレイヤーがアイテムをタップすると、アイテム欄へ追加
④ 箱の中からアイテムが消える
⑤ 戻っても、空の箱が画面に残る

この流れを画像で見せれば、「箱が開いた」「中にアイテムがあった」「自分が取得した」という出来事を文章で説明する必要がありません。

アイテムを取った後に、空になった箱を残すことで、そこにあったアイテムをすでに取得したと分かります。

その後に箱をタップしても何も起きない状態にすれば、同じ場所を何度も調べる必要もありません。

世の中の脱出ゲームでは、ごく普通に行われている処理です。

しかし、この「普通」を作るためには、閉じた状態、開いた状態、アイテムがある状態、取得後の状態をそれぞれ用意する必要があり、それなりに労力はかかります。
AIに作らせっぱなしだとこの労力を省略しがちです。
きっちりと指示をする必要があります。

また、扉も同じ考え方で改善できます。
鍵を使用した瞬間に次の部屋へ移動させるのではなく、まず閉じた扉を開いた扉へ変えます。
その後、開いた扉をタップしたときに次の部屋へ移動します。

この一手間によって、プレイヤーは自分の操作で扉が開いたと理解できます。

ゲーム内では、結果だけでなく、結果へ至る途中も体験の一部です。

 

今回人間が足したのは、派手なアイデアではなかった

AIで作ったゲームへ人間がアイデアを足すと聞くと、新しいルールや意外なギミックを追加する話を想像するかもしれません。

しかし今回、私が行った改善は、もっと地味なものでした。

① ヒントを別の部屋へ移し、プレイヤーが戻る理由を作る
② 扉や箱の状態を細かく分け、操作結果を画像で伝える

という、ごく「普通」の脱出ゲームを再現したまでです。
一つひとつは派手ではありませんが、この積み重ねによって、一本道の謎解きクイズ集が、部屋全体を探索する脱出ゲームへ変わりました。

AIが作った骨組みをゲームとして仕上げるには、どの変化を見せるのか、何をプレイヤー自身に発見させるのかを考える必要があると感じました。

 

脱出ゲームの改善に関するQ&A

Q. 脱出ゲームの面白さは謎解きだけで決まりますか?

私なりには、謎解きだけでは決まらないと考えています。
手がかりやアイテムを見つける探索があり、その探索で得た情報を使って謎を解くことで、脱出ゲームらしい体験になります。
謎だけを順番に表示すると、謎解きクイズ集に近い構成になります。


 

Q. AIに脱出ゲームを作らせると、どの部分を確認すべきですか?

今回の経験では、ヒントとギミックが近くに集まりすぎていないか、操作後の状態変化が省略されていないかを確認する必要がありました。


 

Q. 部屋を行き来させれば探索は面白くなりますか?

移動回数を増やすだけでは、探索の面白さにはつながりません。
別の部屋で得た情報によって、以前の場所に新しい意味が生まれることが大切です。
戻った先で新しい発見があるなら探索になりますが、変化のない場所を何度も歩かせるだけなら負担になります。

 

さいごに

AIを使って、普通の脱出ゲームを作ることは、それほど難しいことではないと思っていました。
雑に指示しても、それなりに脱出ゲームとしての形にはなります。

しかし、実際に完成させるまでには、AIが省略した細かな状態変化を一つずつ直し、一直線に並んだギミックを複数の部屋へ配置し直す必要がありました。

今回作ってみて強く感じたのは、脱出ゲームは謎解きだけのゲームではないということです。

手がかりを探し、以前見たものを思い出し、別々だった情報がつながる。その探索があるからこそ、謎を解いたときの納得感も強くなります。

また、プレイヤーが行った操作は、文章で説明しなくても認識できるようにすべきです。
箱が開き、アイテムが見え、自分で取得する。
鍵を使うと扉が開き、その扉から次の部屋へ進む。
など、こうした細かな流れを整えることで、説明を読まなくても遊べる脱出ゲームになりました。

AIはゲームの骨組みを作ってくれますが、その骨組みに探索する理由を加え、処理をプレイヤーの体験へ変えることが、人間に求められていることだと思います。

今回の人間側の改善によって「一般的な脱出ゲーム」を作れたと思います。
それではまたー

実際に作ったゲームはこちら
脱出ゲーム「忘れられた書斎」

 

 

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